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2008年3月17日 (月)

読み上げ

仕事の取り組み方は人それぞれで、誰でも自分の好みのスタイルというものがあると思う。翻訳作業にしても、紙の辞書をめくりながら鉛筆とノートで翻訳を進めるのが好きという人もいるだろう。私の場合は機械化できるところは極力機械化している。基本的にぐーたらなので機械に頼れる部分はどんどん頼りたいのである。もはや紙と鉛筆の時代には戻れない…。

ある日の午前0時を回った頃、いつものように(?)シュラバ直前作業に没頭しつつ、残りの分量をザっと確認したら1~2時間ほどで終わりそうな感じだった。やったー今日は早めに寝られる!(←午前2時や3時に寝られれば御の字)と思いながら、ラストスパート体制に入ったとき。原文がヘンテコなことに気が付いた。私は原稿をもらうとまずはすべてテキスト化して、それを対訳ソフトを使用しながら1文ずつ訳していくスタイルで作業している。その対訳ツール上に表示されている原文がおかしいのだ。文章の途中に関係のない文章が入り込んでいるような。なんだコリャ? 私は対訳作業に入ったらオリジナルの原稿はまったく見ない。もちろんテキスト化した原稿とオリジナルの原稿が同じであることが大前提だ。テキスト化したときに、真っ先に照らし合わせて確認はしているのだが…。

確認もれ…かな? この一行だけならテキスト化の際に単に私の指がすべったのかとも思えるが。イヤな予感がして次の一文も見てみる。…おかしい! やはり文の途中に関係ないフレーズが入り込んでいる。次の行も、またその次の行も! なんてことだ。結局、そのパラグラフはまるまるおかしくなっていた。あと少しで終わるかと思ったのに! こうなると、もしかしたらここまで訳して来た部分も、気が付かずにヘンな文章になっていたところがあったかも…(ヘンな原文を力ずくで無理やり訳してしまったとか…)。時間は惜しいけれど、どうしても対訳作業中のテキストを全文もう一度確認しなければならない。対訳ファイルから原文をすべて抽出し、それをすぐに英文自動読み上げソフトにかけた。手元には作業の確認用に印刷しておいたオリジナルの原稿ファイルのハードコピー。読み上げボタンを押して、パソコンから流れてくる音声を聴きながら、目は紙原稿を追っていく。

最初のパラグラフが終わった時点で、読み上げ速度を上げる。こんなにゆっくり読まれたんじゃ先が思いやられる(笑)。ノーマルスピードよりも少し早くしてガンガン読んでもらう。こちらも原稿を必死に目で追いながら、心の中で、読み上げソフトは滅多に使わないけれどこういうときには本当にありがたいなぁ、と思う。何しろ疲れ知らずだ。どこで切れるのか判らないような長い文章や、発音のよく判らない医学用語もお構いナシにガンガン読み進めてくれる。

きっかり1時間後、すべての読み上げ(+確認)が終了。結局、私が遭遇したヘンテコ文章のパラグラフと、その次のパラグラフがおかしかっただけで、あとはまったく問題が無かった(=あったらオオゴトだ!)。その部分はオリジナルの原稿が段組みのレイアウトになっていたため、どうやら隣の段の文章とミックスされてしまったようだ(←まぁ要するに私のテキスト化処理のときのミスである)。それにしても読み上げ確認が終わった時点で、思わずパソコンに向かって声を出して「ありがとう!」と言ってしまった。1時間ぶっ通しで休み無く音声で読み上げるなんて生身の人間には難しい。翻訳作業の自動化や機械化については人それぞれ考えも違って、極力マニュアルでやりたいと思う人もいる。本当に好き好きだし、どれが良い悪いというものでもないと私は思っている。でもここぞというときの機械の威力は、やはりありがたいものだなぁと思うのだ。元々ミスしないように、かつ、時間に余裕をもって作業していればそんな必要はないとも言えるが(笑)。しかし、久しぶりに丸1時間も英語を聴き続けた…別の意味で疲れた(笑)。

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2008年3月10日 (月)

医療用語

先日のニュースで、国立国語研究所が医療用語を一般にも判りやすく言い換える取り組みを始めたという話を知った。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080306-OYT1T00402.htm

国語研には実にお世話になっております(笑)。まだ英検がリニューアルする前までは、英文和訳(大意要約)という問題があったのだが、そこで国語研が提案していた「カタカナ語をなるべく判りやすい日本語で」というのが非常に参考になった。さすがにインフォームドコンセントを「納得診療」とやってくれたときには、「えっ…!」と思ったけれど(=そして結局は定着していない。むしろ余計に判りづらい…。現場ではごく普通に「同意取得」とか「同意文書」などとしている)。なんでもかんでも横文字にして、意味のぼやけた和製英語にするのは好きではない。そういう自分も、ときどきパっとふさわしい日本語が出てこなくて、おもわずカタカナで造語することも多いのだが…(でも「シュラバる」(←カタカナ語?)は日本語だ、うん)。

以前に通っていた医学翻訳学校の先生は現役の外科医師だったが(もちろん今も現役でいらっしゃる)、「自分は(学生のときから)どっぷり医学の世界に浸かっているので医学用語は自然に馴染んでいるが、一般の人に馴染みの無い言葉も非常に多い。それを意味が解からないまま使うと、何のことか判らない文章になってしまう。この日本語(医学用語)の意味が解からない、と思う皆さんの感覚を忘れないでください。判りやすい日本語の訳文を作るときに、その感覚を維持することは非常に大切です」とおっしゃっていた。おかげさまで私はいまだに医学用語がよく解からない(笑)。解からないから、調べようと思うし、読みやすい文章を目指したいと思うのだ。

今回のニュースに出てくる程度の用語は、さすがに何年もこの業界にいるので私でも馴染んでいるので、あまり疑問に持たないのだが…(というか、このあたりの用語も判らないとなったら、どうやっても仕事にならない…)。むむ、一般人の感覚を忘れつつあるということか。かといって専門家の感覚なんかカケラもないので、実に中途半端。

とにかく国語研がどのような言い換え案を出してくるのか、ちょっと楽しみだ。私はあまり患者さん向けのものを訳すという仕事は無いのだけれど、こういった用語の変更はとても興味深いしどんなふうになるのか注目したい。

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