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2007年9月28日 (金)

情報交換

先日のメディカルライティングの授業中のこと。ある生徒さん(Aさんとします)が先生に質問。Aさんは製薬会社で社内翻訳をなさっているので立場的に私と近いのだけれど、看護師として臨床現場でお仕事をなさっていたこともある方なので実力は比べるべくも無く…。そのAさんの質問というのが、社内でさばききれない量の翻訳が発生する場合は外注に出して翻訳をお願いするのだけれど、納品された翻訳の品質がひどすぎて使えないことがある、そういう場合、結局こちらが全部チェックして訳し直すしかないんでしょうか…と云う質問。というか、質問になっていないというか(笑)。最後は消え入りそうな声になっていた。おそらくはその作業量のことを思い出して意気消沈というか考えただけでエネルギー消耗というか、そんなところだろう。先生はAさんの言葉を最後まで聞いた後に、ちょっとクスッと笑って、「自分で答えがでてるじゃない?」とおっしゃった。まぁ、そうだよな、これは質問ではない。悪い結果を確認することで、諦めというか踏ん切りをつけるために先生から「それは仕方ないですね」などといって欲しかったのだろう。

Aさんの話に大きく反応したのが現役フリーランス翻訳者のBさんと、なんちゃってフリーランスもどきの私。「それは翻訳会社に突っ返すべき!」と2人で力説。納期は?、分量は?、過去の(その翻訳会社の)使用実績は?、原稿の難易度は?、などと、Bさんと私はなぜか入れ替わり矢継ぎ早にAさんに訊いたあと、そういう翻訳会社は使わないほうがいいですよ、と一刀両断。「前から使っている翻訳会社なんですが…」と、これまた消え入りそうな声でAさん。そういうところは止めたほうがいいですって、と言いながら、それって○○社のことじゃないかなぁと勝手に想像する私。評判の良くない会社はどこでも評判が良くないのだ。さすがにその場で会社名をズバリ口にするのは控えていたのだけれど、Bさんが、「その会社って○…ですか?(←そのものズバリの会社名ではなく、読み仮名の最初の一文字のみ)」とおっしゃった瞬間、私も、「あ~~~! やっぱりそこですよねっ、そこだと思いますよね、そこしかないですよねっ!」と思わず力強く同調。わが意を得たり!の気分。Bさんと私のやりとりを聞きながら、先生も実に興味深そうにニヤニヤしながらうなづいている(=そしてその表情は、先生も○○社の評判には同感のようだった)。

やはり同業者の評価というのは同じになるのだなぁと改めて実感。私が今までいろいろな製薬会社で耳にしている評判とも一致する。ところが、それを聞いていたAさんや、黙って聞いていたほかの生徒さんたちが、「○…って、それはどこですか?(←繰り返しますが、これは読み仮名の最初の一文字だけです)」と逆に私たちに訊いてきた。えっ、ご存じない!? それに、そうやって訊いてくるということは、Aさんが言っているのは別の翻訳会社ということになる。そうなると、こっちもそれがどこの翻訳会社なのかぜひ訊きたい。ここだけの話ですけど…と言って身を乗り出して小声で「○○社です(=今度はフルネームで会社名を言う)と言うと、Aさんは、「ウチは△△社ってところを使ってるんです」と、これまたヒソヒソ話モードでおっしゃる。といっても、教室内でみんなで身を乗り出して(笑)、みんなで聞いているのだから声をひそめても意味は無いのだが(笑)。

Aさんがおっしゃった会社の名前は聞いたことが無かった。どちらかというと個人事務所的な感じのエージェントさんのようで、大手とは言いがたい翻訳会社のようであった。そういえば今までに私が勤めた製薬会社でも、複数の大手エージェントのほかに、やはり複数の個人翻訳者(フリーランサー)や小さな翻訳会社も並行して使っていることがほとんどだった。翻訳をお願いするたびに、納期、ボリューム、得手不得手などを考えながら依頼先を決めていた。ただ、個人翻訳者や小さな翻訳事務所の場合は、基本的には品質が良いので次回もお願いするのが普通で、品質が悪いのにたびたびリピートオーダーしているというのは不思議な話。よほどコネがあるなどの場合以外は、そういう会社に依頼するなんて無駄が生まれるだけだ。

Aさんは、次回からは別の翻訳会社を探します、とおっしゃったあとに、Bさんと私に向かって、○○社ってそんなにひどいんですか?と訊いてきた。Bさんと先生と私の3人は思わず顔をあわせて笑ってしまった。在宅翻訳者同士の話の中でも、特定の翻訳エージェントの話題がでることはあまりない。大抵は自分がどの翻訳会社に登録しているかとか、どこから仕事をもらっているかなどということは絶対に言わない。だから、エージェントさんの実態というか具体的な経験というのは、噂話のレベルでもなかなか表に出てこない。でも今回みたいに、すでにある程度の業界知識があり、実際に仕事の経験もあり、何処で何をしているのかがお互いに(言わなくても何となく)判る場合、わざわざ伏字にして話す必要もないとう雰囲気があって、お互いにストレートに実態を話せてしまう(=結局その後、それぞれ勤め先の製薬会社の実名まで出てきた)。こういう具体的な話というのは、やはりお互いに顔をあわせて同じ授業を取っているからこそなのだろう。翻訳は1人でやる仕事だからこそ、なかなか他の人の仕事のやり方、他の会社の様子、他のエージェントさんの実態などは判らない。そういうものをシェアできるというのはとても貴重だ。先生ご自身も、社内翻訳やフリーランスで翻訳をする人は誰にも質問できないことが多いので、ぜひ皆さんで情報を共有しあって、ここの授業が終了してからも横のつながりを大事にしてください、とおっしゃっている。そういう意味では、翻訳会社の実態情報交換なんて、まさにうってつけの話題なのだろう。

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