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2007年6月12日 (火)

一次翻訳

このごろ翻訳していて自問自答してしまうのが一次翻訳と二次翻訳について。というよりも、そもそも、そんなものが存在していいのかどうかについても考えてしまうのだが。「おうち仕事」のときは、クライアントの内情も知らないし、極端な話、クライアントの社内でしか通用しないような超専門用語(=すでにその範疇を超えるような独自の言い回し)などは判るはずもないので、ある意味、自分の仕事は一次翻訳なのだと割り切って作業をしている部分がある。もちろん正確な翻訳、読みやすい翻訳というのが大前提だけれど、どうしたって、納品した後にクライアントさんのほうで見直し、チェック、手直し、言い回しの変更などがあると思うからだ。逆に、だからこそ、極力原文に忠実に訳出しておいたほうが安心だろうと思ってしまう。大胆に言い回しを変えたりしたら、誤訳しているとか訳漏れがあると言われるのではないかと心配になってしまうのだ。やや直訳調かもしれないが、これは一次翻訳なのだから、クライアントさんのほうで二次翻訳(好きに手直し)するだろう、と思う気持ちが無いわけでもない。

「会社仕事」になると、これがまた別なのだ。最初から「二次翻訳」のつもりで訳していたりする。字面ではなく内容を把握しているし、訳文の使用目的や状況も理解している。例えば、その文書はあくまでも社内ミーティング用の叩き台であり、この後まだ何度も改訂版が上がってくる予定だというようなことを知っていれば、一言一句にこだわって訳出するよりも、多少は大胆な言い回しでもスッキリ訳したほうが良いことは多々ある。つまり最初から「こなれた訳文」を目指して翻訳をする。

そのあたりの違いに自分で戸惑ってしまうのだ。先日メディカルライティングセミナーに参加したときにも、翻訳業界のカースト制度の底辺に甘んじるのではなく、最初から「求められている品質」で仕上げられることを目標にしなさい、というお話を講師の先生からお伺いしたわけだが、これはつまり、おうち仕事で「二次翻訳の品質」にしていくということなのだ。でもいざ自分でやろうと思うとかなり怖い。内容を汲んで言葉を選んで書く作業というのは、当たり前だけれど単純な直訳調よりもはるかに時間が掛かるし、第一、クライアントがそれを望んでいるのかどうかさえ私には見えていない。直訳調で良いから字義通り訳してくれ、と思われている確率のほうが高い気がするのだ。そもそも、私が「会社仕事」をしていて、外注から上がってくる翻訳は直訳調のほうが直しやすい(=二次翻訳しやすいのだ)。ヘタにすらすら気持ちよく読めるような訳文になっている場合、重大な誤訳があってもチェックの際に気が付かない可能性もあって、そういう部分を拾い上げるほうが神経を遣うし時間が掛かって大変なのだ。つまり、いきなり二次翻訳レベルを目指すには、かなり高い翻訳力がなければならないし、中途半端なレベルでは迷惑なだけという気がする。

でも中途半端な時期を経ずに突然スキルが身に付くわけもない。一次翻訳しか出来ない翻訳者から、パっと二次翻訳をこなせる翻訳者に脱皮するにはどうしたら良いのだろう。

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コメント

レベルは全然ちがうんだけど、かつての職場で、
翻訳みたいなことをやってたときのことを
思い出してみました。当時のボスから、あれや
これや手直しを受けつつ、あー、こういう箇所は
こう訳せば(こう丸めれば)OKなのね、という
ケーススタディの積み重ねでした。

> 一次翻訳しか出来ない翻訳者から、パっと二次翻訳をこなせる
> 翻訳者に脱皮するにはどうしたら良いのだろう。

けっきょくは、二次翻訳の場合、クライアントの意向・好みを
徹底的に知って、クライアントの立場から気に入ってもらえる
ものを先回りして仕上げるワケなのかなと思う次第。

となれば、徹底的にクライアントとつきあう、ダメ出しをもらう、
意見交換をする、というコミュニケーションを通じて、その
クライアントを知ることが早道なような気がする。

……
んなこと書いたら、すのべりさんから、
「そんな当たり前のことを言うな!」
って怒られそうだなぁ。スミマセン。

投稿: あるふぁ | 2007年6月13日 (水) 02:09

あらら、こんな開店休業の僻地にコメントくださってありがとう。

>レベルは全然ちがうんだけど、かつての職場で、
>翻訳みたいなことをやってたときのことを
>思い出してみました。

うん、あるふぁさんの仕事、レベル高いから♪

>徹底的にクライアントとつきあう、ダメ出しをもらう、
>意見交換をする、というコミュニケーションを通じて、その
>クライアントを知ることが早道なような気がする。

うーん。そうなんでしょうね、正攻法というか。でもその手段がないんですよ。例えばエージェント(翻訳会社)さんは、エンドクライアント(実際に翻訳を発注している会社、まぁ主に製薬会社とか医学部の教授とか)の名前も教えてはくれないので(=大体は翻訳する内容から判るんですが)、直接コンタクトも取れないし、コミュニケーションのとりようが無い。その上で、さて、どうしよう、という状況。

>んなこと書いたら、すのべりさんから、
>「そんな当たり前のことを言うな!」
>って怒られそうだなぁ。スミマセン。

いえいえ、とんでもないです。翻訳業ではない人の視点というのはとても参考になります。上記の、「徹底的にクライアントの好みを知る」というのも、翻訳業をやってると、「そんなのムリだし」って最初から思っちゃうんだけど、他の業界の人の視点から見ても、まず第一にそれなんだなぁ、と。であれば、やはり何とかしてそこを突破する糸口を工夫しなければ、って思いますもんね。リピートオーダーをいただけるように精進して、正攻法でエンドクライアントさんに近づくとか(=つまり指名してもらえるようにまでなれば=って現段階では夢みたいな話だけど=突破口が開けるかもしれないし)。やるべきことをせずに、ぐちゃぐちゃ言ってても仕方ない。頑張りますっ。ご意見どうもありがとう!

投稿: snowberry | 2007年6月13日 (水) 23:46

こんにちは。
ご無沙汰してます。
色々考えて、日々上昇しているのですね~。
いつもサイト拝見してますよ~。大変参考になります。
僻地(笑)住んでる身としては、都市部の雰囲気、現場の雰囲気を知る有難いサイトです。これからもどんどん更新してくださいね。待ってます。

関係ない話で恐縮ですが、snowberryさんが参加していらっしゃるという翻訳ボランティアに参加する事になりました。ボランティアしたいなって思っていたので、嬉しいです。これからもよろしくお願いします~♪

投稿: upaupa | 2007年6月14日 (木) 12:15

upaupaさん、こんにちは。
>色々考えて、日々上昇しているのですね~。

ぐるぐる考えてはいるのですが、なかなか上昇しません(苦笑)。ぐるっと回って同じところに戻っているという感じです。

>大変参考になります。僻地(笑)住んでる身としては、都市部の雰囲気、現場の雰囲気を知る有難いサイトです。

では僻地つながりでしょうか(笑)。えーと、他の方の参考になると思えるようなことは何も書いていないので、そのようにおっしゃっていただけると恐縮です。でもまぁ確かに私は「翻訳する人間の立場から見た製薬会社」という視点で書いてしまうので、製薬会社の社員さんとは異なる「翻訳目線」で現場の雰囲気が出ているかも知れませんね。

>翻訳ボランティアに参加する事になりました。

うわぁ~、こんなふうに横に広がっていくつながりって面白いですね。もしかして昨日紹介があった方ですか? ハンドルネームがupaupaさんだからお名前もてっきり「羽波」とかなのかと思っていましたが、そうじゃないみたいですね(笑)。こちらこそ今後ともどうぞよろしくお願いします!

投稿: snowberry | 2007年6月15日 (金) 00:56

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