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2006年10月12日 (木)

重箱の隅

10年以上前の話になるが。私が某医療機器会社に勤めていた頃、どういうわけだか私は薬事担当者だった。小さな会社だったのでアレもコレも兼務しなければならなかったのも事実だが、私は貿易事務のハズなのに…と思いつつ、厚生省(当時)に申請書類を持っていったりしていたのだ。よく考えれば「担当者」という名前の使い走りだったワケだが(笑)。この業界の方にとっては言うまでも無いことだが、製薬と医療機器では、薬事の大変さには雲泥の差がある。医療機器の薬事なんて、製薬に比べたらチョチョイのチョイである。当時はそんなこともロクに判っていなかったが、チョチョイのチョイ程度の業務量しかないので、私みたいなペーペーでも一応は「薬事担当者」なんぞというものになっていた。

そのぺーぺー担当者である私が厚生省に書類を持っていったときのこと。ようやく順番を呼ばれて書類の受理をお願いしようとしたら、中身を確認していたお役人サン、「ここ(厚生大臣の氏名をタイプアップしたところの横)に下線がないですね。下線がないとサインできません。下線を引いて、再提出してください」と言ったのである。…ブチ切れそうになった。さんざん人を待たせておいて、誤字脱字などならまだしも、下線だぁ!? そんなもん、そこにある定規とボールペンでササっと引けばいいじゃないのっ! それとも何かっ、大臣ってのは下線が無いと署名する場所も判断できないほどの無能なのかっ! 会社に戻って書類を作り直して、またここまで来るのに電車賃いくら掛かると思ってんのよっ! アンタらの給料は私たちの税金から出てるんでしょっ!!! 

…とその場で言ってやろうと思ったのだが、モロに表情に出ていたらしく、同行した上司にすかさず止められ(要するに上司はそのお役人サンにぺこぺこ「はい、すぐ作り直して持ってきます」と平謝りしたのである)、帰り道に必死になだめられた。私はなかなか怒りが収まらず、これが薬事という仕事なのか、お役所仕事なんて重箱の隅をつつくようなイヤミな仕事なのだ、と頭の中に刷り込まれてしまった。というわけで、薬事絡みの仕事が苦手になってしまったのだ(=単純、笑)。

前に社内翻訳で概要書を訳したときにも、機構の書類はやっぱり重箱の隅のように思えていた。ところが、である。今の仕事で機構の書類を丁寧に読んでいると、ごせつごもっとも、と唸らされてしまうことが多々あるのだ。10数年の間にお役所仕事が少しは変わったのか、それとも、あのとき下線を引けと言ったお役人サンがちょっと例外だったのか(=こっちだと思いたい)。あるいは私が少しは成長したのかしら(…うーむ、それはどうだか…)。とにかく、人体に、いや、人命に関わることなのだから、重箱の隅の隅までつついて当然なのだ。よくぞこんなに細かいところまで指摘してくれました!と、今の私は半ば感心しながら、せっせとお役所書類を読んでいる。

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