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2006年10月28日 (土)

略語調べ

どこの世界にも、その場でしか通じない、一種の隠語か符丁のようなものがある。専門用語とか業界用語というよりも、その集団の中で生まれた合言葉というか。デパートなどで店頭スタッフが、「3番行ってきます」でトイレに、「1番行ってきます」でお昼休憩に行ったりとか(あ、この数字はテキトーです)、飲食店で「2番です」と言ったらゴキ○リが出たことを示すとか(=お客さんに判らないように、それこそ隠語にするわけだ)。こういうのは調べるも何も、その場の人に訊かないと判りようがない。簡略した言葉というのは部外者にはサッパリ判らない。

困ったことに略語というのは正解が1つではなく、同じ略語にもいろいろな意味がある。人によってまず最初にどんな言葉を連想するのかはバラバラだ。PCBと言われると、なぜか私はまっさきにプリント基板を連想する。おそらく「PCB」で一番最初に覚えたのがプリントサーキットボードだったからだ。でももし環境系の文書の中に出てきたら、普通はポリ塩化ビフェニル汚染関係の話かな、と思うだろう。もし、ちょっと離席していて自分の席に戻ったときに、机の上に「PCB」と書いたメモが置いてあれば、それはもちろん、「Please call back」の意味だ。私自身、今までに何十回、何百回と、そう書いたメモを上司の机の上に置いている。略語はその時その状況に応じて変幻自在なところが便利でもあり厄介でもある。

社内翻訳の仕事をしていてありがたいのはその場ですぐに略語の意味が判ること。まぁ一般に使われているような言葉ではなく、その企業独自の略語というものが多いので、そんなものは外部の人間に判り得ないのだから、逆に教えてもらわなければ業務に支障が出て困る。でも企業内で仕事をしていて思うのは、自分が属する集団の中でしか通じないような言葉でも、それをほとんどの人はあまり意識していないんだなぁということ。スタンダードの概念が違うとでもいうのかな。自分たちが共有している(=自分たちが作った)言葉があまりにも(その集団の中に)浸透しすぎて、他所では通じないかもしれないということを忘れてしまうんだろうか。

定期案件としていただいている論文の翻訳の仕事で、今後は略語を使わないで欲しいというリクエストがあった。もちろん私が勝手に略語にしているわけではない! 原文が略語表記になっているし、下手に補足しないほうが良いのではないかと思っていたので、今までは略語のままにしていたのだ。そうしたら、エンドクライアントさんから、略語が多すぎて判りづらいので極力略語を避けて欲しいと言われたそうだ。…ってことは、これからは略語の意味を全部調べなきゃならないのね…(涙)。血圧、血算、心拍数、などなど、おそらく万国共通と思われる検査関係の略語なら何の問題もない(まさかWBCをワールドベースボール…とは誰も思わないだろう)けれど、特定疾患の特定検査、特定薬剤、特定症状などに略語が出てくると、「これ、この医師が作った略語なんじゃないのっ?!」と言いたくなるくらい、調べてもサッパリ判らないことがある。だからエンドクライアントさんも略語を使わないでくれと言うんだよなぁ、きっと…。それにしても略語多すぎ! どの分野にも専門用語と略語が山のようにあるとは思うが、略語辞典もあまり役に立たないことが多くて、理解不能度が一層上がってしまうのがなんとも悲しい。

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