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2006年9月14日 (木)

数字の罠

メルクマニュアルを読んでいたら、あれ?と思う箇所に遭遇した。いやまぁ、アレと思う箇所は随所にあるけれど。一行ごっそり訳抜けとか日常茶飯事だし。気をつけなければならないのは、一見なんの問題も無さそうに見えるところだと思う。違和感のある訳というのは、読めば何かおかしいということが判るわけで、読み手に疑問をいだかせ、原文に立ち戻って注意深く読もうという気持ちにさせるという点で、最終的には大きな問題にならなかったりする。でも、一見なんの問題もなくスルっと読めてしまうような部分というのは、原文を確認することもなく、そのまま読み進めてしまい、間違った情報をインプットしかねないので、そっちのほうが怖い。

引っ掛かったのは次の部分。
原文:Ischemic colitis most commonly affects those in the 6th to 8th decade of life.
訳文:虚血性大腸炎は,60~80代の人に最も一般的に生じる。

一見なんの疑問も持たずにスル~っと読んだり訳したりしてしまいそうなのだ。数字の持つマジックという気がする。要は「高齢者」ということなんだろうから、訳文が「60~80代の人」でも大きな問題にはならない部分ではあるけれど。

似たような文章を、以前に通っていた翻訳学校の先生に指摘されたことがある。授業ではCMDTからの抜粋で課題が出されていたが、その中に「2nd decade of life」のような表現があり、私はパっと「20代で~」とやっていたのだ。

「those in the 6th to 8th decade of life」の部分、「人生の6番目の10年間」というのは60代のことではない。

人生の1番目の10年間:0~9歳
人生の2番目の10年間:10~19歳
人生の3番目の10年間:20~29歳
人生の4番目の10年間:30~39歳
人生の5番目の10年間:40~49歳
人生の6番目の10年間:50~59歳
人生の7番目の10年間:60~69歳
人生の8番目の10年間:70~79歳
人生の9番目の10年間:80~89歳

つまり、「50~70代の人にもっとも一般的に生じる」ハズなわけで。まーこれはメルク・プロフェッショナルの文章だし専門家が読むわけだから、50代なのか、それとも60代なのかなんてのは、読んでいる医師のほうがよく判っているハズだろうし、そう大きな問題にはならないだろう。でも仮に患者パンフレットのようなものであれば、この10年間を(訳者が)間違えたがために、読み手の患者さんが「自分はまだ50代だから該当しないので大丈夫だろう」などと思ってしまい、そのために必要な処置が遅れたりすることになったら大大大問題になってしまう。

子供の頃、社会科の授業で、○世紀は西暦何年から何年でしょう、というのがややこしくて良く間違えた。それに似ている気がする。見た目の数字に惑わされないように気をつけなくちゃ。

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コメント

日本語読んで「ふむふむ。」で、それから原文読んで、「はにゃ?」ってアタシも思いました~。

メルクの訳が大変なコトになってるのは、いろんなとこで聞いてたし、超初心者のアタシでもなんとなく気づいてましたが…。
1行ごっそり抜けなんてのもあるんですか!?
しかも日常茶飯事!?

あらまあ…。

投稿: とりじろう(♀) | 2006年9月15日 (金) 11:54

>1行ごっそり抜けなんてのもあるんですか!?

あちこちにありますよー。しかも笑えることに文章の数は同じだったりするのです。原文が「A. B. C. D.」だとすると、和訳したほうは「a。c。d。c」のようになってたり(判ります? 原文Bが一行ぬけてて、原文Cが2回出てくる。それもご丁寧に1~2行は飛ばした後に再登場。なんでこんな不思議なワザが使われているのかサッパリ判りません)。

あれだけの大物仕事ともなると、訳者の問題ではなく(もちろん訳の問題もあるでしょうけど)校正・編集の問題っていうのも大きいのかもしれないですね~。

投稿: snowberry | 2006年9月15日 (金) 18:00

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