« ミク中毒 | トップページ | 曜日感覚 »

2006年7月24日 (月)

新語の訳

定期案件としていただいている論文の翻訳はある程度確立した疾患の治療に関するものが多いので文中に出てくる言葉には定訳と言えるものがあり、これまでのところはきちんと調べれば大体は解決している(と本人は思っている)。手こずるのは施設名やら固有名詞(特に医師名)、病院名、診療科目名のほうだったりする。が、今回ちょっと毛色(?)の違う論文が来てうなっている最中。辞書に載っていないのは当然として、ググっても定訳らしきものが見当たらない。そのままガシガシ調べて、片っ端から説明文を読んでいたら、最近提唱され始めた概念ウンヌンと書かれた文章に行き当たった。はりゃりゃりゃ、これこそまさに翻訳のお仕事の本髄。

特許翻訳の分野にいらっしゃる方であればおそらくどなたでも経験なさると思うのだが、何しろまだ世の中に無い(一般に出回っていない)ものに対する書類を扱うのが特許翻訳なのだから調べたって定訳など在るハズが無い。自分が訳している言葉が「定訳」になるかもしれないのである。これこそ翻訳者の醍醐味!? でも医学分野ではそういうことは多分(おそらくほとんど)ないのではないかと思う。定訳がなければ原文をそのまま使ってしまうから。論文の中にそこだけヒョコっと原文表記が残っていることなど珍しくない。ヘタな訳語を充てるよりも、そのまま原文を残しておいたほうが好まれるようなのだ。

個人的には、原文をそのまま残した形で入れるのはどうも好きではない。手抜きしたような気になってしまうし、それ以上になんだか落ち着かないのだ。何故と訊かれても困るのだけれど。これから先どのように現場に浸透しどういう呼び名が付けられるのかを決めるのはまさしく医療現場の人々なので、その前にシロートの私が勝手に名前をつけてしまうわけにも行かないのだから原文表記しておくしかないのは判っているけれど、う~、なんだか座りが悪いというか落ち着かないというか。

SARS騒ぎがすごかったころ、通っていた翻訳学校から手伝いを頼まれてWHO資料の翻訳をしたのだが、あの時はまだSARSの日本語の定訳がなく、それこそ「最新情報の翻訳」だったわけで(WHOの情報のリリース直後に翻訳したので)和訳の中にあちこち英文がそのまま残るような状況だった。これじゃ英語が判らない人は読みたがらないだろうな、と思ったけれど、そうするしかないところにジレンマを感じた。最新情報の翻訳って難しい。誰のために、何のために訳すのか、どういう形で仕上げるのがベストなのか、考えさせられる。今まではたまたま「確立した疾患、確立した治療方法」の翻訳依頼が多かっただけであって、本来なら(最先端のものを扱えるくらいに私に実力があれば)、翻訳の需要が一番多いのは、まだ定訳のないような新しい情報、新しい概念を広めるような文書なのだと思う。そういうものをサラサラっと訳せるようになる日は・・・くー、まだまだ遠い。

|

« ミク中毒 | トップページ | 曜日感覚 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ミク中毒 | トップページ | 曜日感覚 »