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2006年1月25日 (水)

音声入力

私は以前勤めていた某外資系製薬会社で外国人付き秘書をしていた。そのときの外国人上司はパソコンが苦手だった。もちろんこのご時世でパソコンを使わずに仕事をすることはできないので、上司も普通にパソコンを使い、メールの読み書きも自分でしていたけれど、基本的にとてもアナログな人だった。パソコンの画面でモノを見るのが好きではないようで、ワード文書は言うに及ばず、メールやウェブ情報など、何から何まで印刷してハードコピーにして読んでいた。上司は日本に来る前には音声入力ソフトを使っていたそうで、自分のパソコンにもそれをインストールしてほしいといった。社内のヘルプデスクに相談したところ、社内標準ソフトではないので、使いたい場合には自分で勝手に調べて用意して欲しい、何かあってもサポートも出来ない、といわれた。残念ながら私は音声入力ソフトについてはそのころ何も知らなかったので(今もあまりよく判ってはいないけど)、上司には、そのまま、社内標準ソフトではないので判らないし使えないと思う、と答えた。

子供の頃、海外の推理小説などを読むと、貴族の老紳士が話す内容を、隣で美人秘書がディクテーションしてそのまま口述筆記(またはタイプ)するというシーンが出てくるたび、カッコいいなぁ、そういう仕事があるんだ、話したことをそのままタイプするなんて凄い、と思っていた。でもそれはアルファベットだからできたことなのだと今は判る。日本語だったらなかなかそうはいかない。欧米の言葉はアルファベットだけなので発音と同じようにそのまま入力すれば済むが、日本語には、漢字、ひらがな、カタカナがあるし、なんと言っても、同音異義語がある。耳で聞いた言葉をその通り文字にしても正しいかどうかは判らない。漢字の短縮形もたくさんある(例えば自由民主党を自民党にしたり、とか)。固有名詞にいたっては勝手な読み方をつけているものもある。やっぱり日本語の音声入力というのはかなり難しいと思う。

上司は簡単には引き下がらなかった。アメリカ本社の同僚に音声入力ソフトのことを話し、本社からドンとソフトのパッケージが送られてきた。上司は意気揚々と、アメリカ本社ではこれは社内標準ソフトだから使っても大丈夫、という。そりゃあそうかも知れないけど、これ一体だれがインストールするんですか? 日本語が全く判らない上司のパソコンには英語版のWindowsOSが入っていて、ただでさえヘルプデスクの人たちにはいろいろお手間を掛けているのに。音声入力ソフトについては私も判らないしヘルプデスクも手伝ってくれないので、入れたいんだったらご自分でどうにかしてくださいね、と、ちょっと冷たい対応をしてしまった私だが、日本に来る前には自分でそれを使っていたからなのか、上司は嬉々として、自分でやるから大丈夫、と言った。その後、自分であれこれやってみたようだったが、その音声入力ソフトは、結局使われないまま、棚にしまい込まれたのでした、ちゃんちゃん(笑。ちなみにその後、私もちゃんと手伝いましたよ、でもうまく作動させることができなくて互いに諦めたのでした)。

最近になって、私も音声入力ソフトを使ってみたいなと思うようになった。パソコンに向かってキーボードをたたくというのは、元気な時にはなんの問題もないけれど、ちょっと具合が悪い時にはなかなかしんどいものである。パソコンに向かって座った姿勢ではなく、寝転がったまま、マイクに向かってしゃべったことをそのまま文字にして起こしてくれたら楽だなぁと思うし。そこまでして何か書く必要も全然ないんですけどね。もちろん、仕事に使えるとは全く思っていない。医学用語なんて同音異義語のオンパレードだし、そもそも、頭の中で瞬時に翻訳して発話するなんていう芸当は私にはできません。というわけで、お気づきかもしれませんが、本日の入力は初めての音声入力ソフトによるカキコミである。もちろん目一杯手直しは必要なわけだが。それにしても、人間、こうして楽な方に流れてしまうんだな。そのうち手も足も必要なくなって、頭でっかちのタコのような火星人みたいになってしまうんじゃないだろうか。

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コメント

撓骨神経麻痺で1年近く左手が全く動かなかない時期があったんですが、その時は音声入力を真剣に考えましたねえ。で、いろいろ調べているうちに、片手入力のほうがよほど早いという結論に達して導入しなかったんですけど。夜中に一人でPCに向かってブツブツしゃべってる自分を想像して、げっ、と思ったことも理由。ささやくような声では入力できないので、人迷惑でもあろうし。

投稿: 炬燵猫 | 2006年1月25日 (水) 08:44

本社から音声ソフトをとりよせて
「社内標準だから大丈夫!」とかいってる
あたり、ほほえましいですね~

私の知ってる人が
メールで送られてきたマニュアル(分かりやすいように、画面の画像つき)を見て、
「ここをクリック」という説明通り
画像のOKボタンにマウスをあてていた、
(つまり、モニターにマウスを押し付けてた)
という伝説があります。

こういう人たちにとって
果たして音声ソフトは敵か味方か・・・。

投稿: Blondy | 2006年1月25日 (水) 13:35

炬燵猫さんっ! おいでいただいて恐縮です。コメントありがとうございます。

>片手入力のほうがよほど早いという結論に達して導入しなかったんですけど。

うーむ、それは考えてもみませんでした。片手入力か・・・。確かに手直しがかなり要るので時間的には早くないんですよね。自由自在に使えるようになるまでにはかなりの「教育」が必要そうで、それを考えてたら結局は自分で打つほうがストレスもたまらずに済みそう。

>夜中に一人でPCに向かってブツブツしゃべってる自分を想像して、げっ、と思ったことも理由。

むむっ、炬燵猫さん、もしや夕べの私の姿をご覧になっていたとか?(笑) そうなんです、夜中にやってるとかなり珍妙な姿。クリアに発音してあげないと正確に聞き取ってくれないし。高性能マイクを使えば「ささやき」も聞き取ってくれるかなぁと思ってはいますが、果たしてそこまですべきかどうか要検討という感じです。

投稿: snowberry | 2006年1月25日 (水) 21:39

> こういう人たちにとって
> 果たして音声ソフトは敵か味方か・・・。

ん~、誰か詳しい人が全部セッティングしてあげれば味方になるんじゃない? ちなみに私が使っているヤツは音声入力だけじゃなく、音声コマンドがある(らしい=使ってないから判らない=)ので、音声でパソコン操作もできることになってる。そうすればマウスを画面に当てるようなこともなくなるだろうし、パソコン苦手な人にはすごく便利なのかも。

でも、肝心のセッティング自体が大変なんだと思うんですよねぇ。結局、私の上司の場合もセッティングで挫折したワケだし(笑)。パソコンって魔法の箱じゃないし、便利に使うためにはそれなりの準備が必要で、これが結構メンドーだし手間ヒマ掛かるし多少の知識も必要だったりする。でも翻訳していく上でパソコンはとことん便利に使い倒したいのよねっ! 便利な使い方があるんだったら果敢に攻めようではないか、と思う私です。たとえタコ火星人になろうとも?(笑)。

投稿: snowberry | 2006年1月25日 (水) 21:47

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