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2005年9月27日 (火)

がんサポートキャンペーン

どこかの国営放送の回し者ではありませんが、私は朝の時計代わりにいつもNHKをつけています。見るとはなしにつけているだけなのでラジオでも良いのですが、まぁ習慣的に。天気予報のときだけテレビの前に来てしっかり見ています(天気図を見るのがなぜか好き。読めないけど、笑)。

今朝はがんサポートキャンペーンをやっていました。定期的にやっている番組なので、テーマ音楽が掛かると、あっ、今日はがんサポートキャンペーンをやるんだ、と判るくらいに耳慣れました。
http://www.nhk.or.jp/support/

今日の番組の中で出てきたのは直腸結腸癌治療薬。私が初めて取り掛かった癌治療薬が直腸結腸癌治療薬だったので感慨深いというか複雑な気持ち。というのは、訳していてとても苦しかったから。文章が難しいとかそういうことではないんです。いや、実力不足で難しいのはいつものことなのですが、それ以上に、重苦しい文章で、訳していて息苦しいような、こんな言い方をしてはいけないのですが、救いが見えないような気がして、気持ちが苦しかったのです。それまで私が訳したことのある文章は、何らかの処置をすれば治癒する病気に関するものばかりだったので、治らないかもしれない患者さんへの治療薬というものを扱ったのは初めてで、抗癌剤に付き物の副作用も、それまでの医薬品とは質の異なる、読んでいるだけでも苦しくなるような副作用が並んで、とても辛かったのです。ある意味、この分野の厳しさの一面を思い知らされた仕事でもありました。抗癌剤のプロジェクトが終わって、頭痛薬の翻訳に入ったときに、なんと気持ちが軽くなったことか! どんな病気も患者さんにとっては辛く苦しいのは判っていますが、頭痛薬の副作用なんて、抗癌剤の副作用に比べたら可愛いものです。気分的には鼻歌を歌いながら訳せるような、足取りが軽くなるような(といっても机に向かっているのだから足取りなんて関係ないのですが)、そんな気持ちになったことを覚えています。

特定の薬剤について言及するわけにはいきませんし、今回の話は抗癌剤一般のものとしてお読みいただきたいのですが。当時、抗癌剤の翻訳は初めてだった私は、その薬は他にもう治療方法のない癌患者さんに、最後の治療選択肢として使う抗癌剤だということを上司に教えてもらっていました。ところが訳し始めてすぐに、「100人中3人に効果がある」という表現に突き当たり、頭の中が「?」状態に。だって効果がある薬でしょ? それなのに100人中3人? 医学や薬学のバックグラウンドのない文系の私にはすぐには理解ができませんでした。100人中80人くらいに効果があるのが当たり前なんじゃないの?と漠然と思っていたのです。素直に上司に質問したところ、「癌の場合、何が病気(腫瘍)に効くのか判らないし、人によって(=つまり腫瘍によって)効き方は違うので、抗癌剤というのは100人全員に効くということはない。特に今回の薬みたいに最後の手段的な抗癌剤の場合、そのままであれば100人とも治療の手立てが無くなるところなのに、100人のうち3人に効果があれば、それで充分に「効果のある薬」になる」ということでした(注:これはあくまでも抗癌剤一般の話です)。これは衝撃的でした!

確かに、他に手立てがなく治療の望みがないという状況下で、100人のうち3人は治るのであれば、「効果のある薬」ということになる、、、のかも知れません。けれども、ただでさえいろいろな治療方法を試しても効果が無く、体も(そして気持ちも)弱っているだろう患者さんに対して、強い副作用の出る薬を処方する際の注意事項などを訳しながら、私はやりきれない気持ちになりました。癌の治療薬として効果があることを謳う文章の一方で、投与しても効かないかもしれませんからね、という注意事項を訳さなければならない(そして割合から言えば、97%の患者さんには効かないということは、「投与しても効かないかもしれませんからね」というよりは、「大半の人には効かないのですが、もしかすると効くかもしれませんからね」のほうが日本語としては正しい、、、気がする)。

そんなことを、今朝のテレビを見ながら思い出しました。この分野で翻訳に携わることの重さを改めて感じます。100人中3人に効く抗癌剤が100種類あれば、100人の患者さん全員が、自分に効果のある薬を2~3種類は見つけられるのですよね。そのためにも、新しい治療薬が少しでも速く患者さんに届けられるようになって欲しいし、私たち翻訳者も(などというのはまだおこがましい、翻訳者未満の私ですが)頑張って翻訳に取り組みたい、と思います。私も当時よりは少しは抗癌剤の翻訳経験も積んで、今は及ばずながら癌関連文書の翻訳のお手伝いをしています。癌患者さんに(もちろん他の病気で苦しんでいる患者さんにも)医療の恩恵があることを願って止みません。
http://f57.aaa.livedoor.jp/%7Ecancerit/index.html

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コメント

自分が患者として、または患者の家族としてその文書を読むことになったら…と思うと苦しいですよね…何とも。

投稿: pirucha | 2005年9月28日 (水) 22:40

他の疾患に関する文章を訳しているときも、自分がこの病気だったら、、、と考えることが多いのですが、癌は特別だと思います。遺伝疾患や先天性疾患に関しては、幸い自分はそういう病状を抱えていないと言えますが、将来は癌にならないという保障はどこにもないし、まして、親類縁者まで考えたら、誰かは当事者になっているだろうと思えますから。本当に他人事じゃないですよね。だから訳していて怖くもあるし、重いなぁ、と思うのです。

投稿: snowberry | 2005年9月29日 (木) 00:33

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